亡き人に会うために

大切な人を亡くされた人へ|前を向いて歩いていくためのヒントと故人に再び会うための方法を考えるブログ

あの日あの時

 

 

 

私は学生時代に遊びほうけていたため、今となってはそれを多少後悔しています。
しかし、遊んでいたからこそ多くのことを知ることが出来ましたし、遊んでいたからこそ最愛の人にも出会えたわけですから、一事が万事悪いということでもありません。
まぁ、このあたりはなかなか難しいところです(笑)

 

 

さて、そんな学生時分の話ですが、私は作業着姿のとある職人のおじさん(Eさんとします)と知り合いました。
たまたまパチンコ屋で隣に座り、Eさんの灰皿でモクモクしているタバコに気付いた私が、「おじさん、それなんとかなりません?」と言ったのがきっかけです。
ちなみに、この時Eさんは相当ムカついたそうです。
ただでさえ血気盛んな人でしたし、当時40過ぎだった彼には自分がおじさんだとの自覚がまったくなかったらしいので…
このことは、あとになってからことあるごとに言われました(笑)

 

ただ、頻繁に顔を合わせるようになると、仲良くなるのにさほど時間はかかりませんでした。
いつしか食事に誘われ、Eさんの知り合いや仕事仲間にも紹介され…といった具合に日に日に仲良くなっていったことを覚えています。
また、なぜか私がおごることが大半でしたが、パブやスナックにも連れていってくれましたし、「バイト気分でどう?」などと言って仕事現場にも連れていってくれました。
それだけでなく、仮免の私に練習がてら横須賀のほうまで運転させてくれた覚えもありますし、そうそう、確か数人でボウリングをやったような記憶だってあります…

 

 

当時の私は二十歳そこらの若造ですから、Eさんが連れて行ってくれたパブやスナックなどは、「友人たちと行くキャバクラ」とはまた少し異なりとても新鮮でした。
それに仮免での長距離ドライブももちろん初めてでしたから、それもまた非常に刺激的な体験でした。
そう、Eさんは、まだ世の中を大して知らない私に新しい世界をいろいろと教えてくれたんです。

 

 

そんなEさんとの思い出の中でも特に鮮明に記憶に残っているのは、バカみたいに何度も行った焼肉屋です。
そういえば、ある日少し離れた席にボクシングの畑山選手がいらっしゃってて、私たち二人でビールを差し入れたことがあったのですが、それもまたその焼肉屋でのいい思い出のひとつです。

 

 

まぁそんな感じでEさんとは結構遊び回ったのですが、特筆すべきはEさんの顔の広さだったように思います。
どこに行っても人気者でしたし、そのおかげでその場が初めてだった私も居心地がよかったことを覚えています。
これはきっと彼の人徳のなせるわざだったのでしょうね。

 

 

とはいっても、お金があると気前よく使ってしまう人でもあったので、だいたいのお店は私持ちでしたし、結構な頻度で次の給料日までを条件にお金を貸していた気がします。
もちろん給料日には必ず返してくれるので、その点については安心していました。
それに、「困っているなら貸してあげたい」と思えるほど気持ちのいい人間でもありましたから。

 

 

 

そんな私たちですが、私が仕事を始めた頃からですかね、少しずつ疎遠になっていったような気がします。
とはいっても、仲が悪くなったといったことではなく、顔を合わせる機会が減ったせいで必然的にそうなっただけです。
そしてその決定打となったのが、私が横浜を離れたことです。
それ以降は年に1,2回Eさんから近況報告の電話がある程度で、ほとんど接点はなくなりました。

 

 

そんなこんなで5年ほどたったある日、私はEさんが亡くなったことを知りました。
それははるばる例の焼肉屋に久々に顔を出しに行った時のこと、Eさんと仲が良かった女性の店員さんから唐突にその事実を告げられました。
なんでも、死因は大腸がんだったそうです。

 

 

すぐには状況が飲み込めない私に、店員さんは立て続けに次のことを教えてくれました。

 

 

店員さんがお見舞いに行ったときにEさんが私のことをずいぶん気に掛けていたこと。
店員さんが電話してみればと勧めても、「いや、たぶん忙しいし迷惑をかけるだろうから」と結局私に電話をしなかったこと。

 

 

そういえば電話ありませんでしたね。

 

 

だから私は、あなたが病気だったことも知りませんでしたし、私のことを気に掛けてくれていたことも知りませんでした。
だから私は、別れの挨拶もできませんでしたし、あなたのお葬式にだって参列できませんでした。
だから私は、大切な友人が亡くなった事実を、数カ月経ってからようやく知ることができました。

 

 

でも、何も文句は言いません。
あなたのその心遣いが、私にとっては何よりも嬉しかったので…

 

 

今思えば、「交際相手を亡くして死ぬほど沈んでいた私」を誰よりも気に掛けてくれていたのはあなただったように思います。
少しでも元気になるようにと、いろいろなところへ連れ回してくれたのもあなたでした。

 

 

今更ですが、本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 最後に

 

 

今日久しぶりに横浜に行ったので、あなたを思い出しました。
あなたを思い出したから、一緒に遊んだ辺りを歩いてみました。

 

 

そしてあなたを思い出したから、文章も書いてみました。
涙が溢れるのも、もしかしたらあなたを思い出したからなのかもしれません。

 

 

いつかまた会える日を楽しみにしています。

 

 

 

 

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